教習所でもMT車(マニュアルトランスミッション車)のエンジンのかけ方と切り方を教わりますが、各操作の意味について完璧に理解している人はおそらくあまりいないでしょう。
本記事ではMT車のエンジンのかけ方と切り方を説明します。
またMT車に乗る方は古い中古車に乗る方も多いと思うので古いMT車についても雑学的な要素を取り入れながら説明していきます。
早速本題に入りますがMT車のエンジンのかけ方と切り方は以下の通りです。
エンジンを始動する時の手順
- サイドブレーキがかかっているのか確認する(かかっていなければかける)
- フットブレーキを踏む
- クラッチを踏んでギアをニュートラルにする(フットブレーキを踏んだ状態で)
- エンジンをかける(スタートボタンを押す、またはキーを右に回す)
ニュートラルでアイドリングの状態と仮定して
エンジンを停止する時の手順
- フットブレーキを踏む
- サイドブレーキを引く
- クラッチを踏んでギアを1速かRに入れる
- エンジンを切る(ストップボタンを押す、またはキーを左に回す)
- クラッチを放す
- フットブレーキを放す
一応順番も書いていますが正直な話、操作の順番は絶対ではありません。詳細は後述します。また全ての操作を行わなくてもエンジンをかける事も切る事も可能です。
なぜ上記の様な作業を行うのかというと安全の為です。各操作にはそれぞれ意味があるので本記事では細かく説明していきます。
MT車を安全に乗りたい方、MT車の雑学を知りたい方は参考にして下さい。
駐車時のブレーキについて
エンジンをかける時も切る時も関わる事ですが駐車時のブレーキについて説明します。
駐車時には基本的に車が動かない様に以下の2つのブレーキを使用します。
- サイドブレーキ(パーキングブレーキ)
- エンジンが停止している時にギアを入れる:ブレーキの役割がある
⇒本記事では「ギアブレーキ」と表現させて頂きます
サイドブレーキとギアブレーキについて説明します。
サイドブレーキについて
重要な事として伝えたい事はサイドブレーキ(パーキングブレーキ)はイメージよりも強く利くブレーキではありません。
そもそもサイドブレーキは後ろブレーキしか利きませんし、引く強さによっても随分とブレーキの利き具合も違ってきますので決して安定感のあるブレーキだとは言えません。サイドブレーキはあくまでも補助的なブレーキです。
既に車を運転した事がある方なら一度や二度はサイドブレーキが利いている状態で車を動かしてしまった事があるでしょう。
サイドブレーキを利かせた状態でも車は割と簡単に動きます。
なのでサイドブレーキをあてにする駐車や停車は要注意です。サイドブレーキがあまり強くない事を知っているとエンジンをかける時や切る時に安全に行う様になります。
ギアブレーキについて
ギアブレーキはサイドブレーキよりも強く利きます。
ただし注意点としてギアブレーキが利くのは駆動輪のみです。つまりFF車であれば前輪のみ、FR車であれば後輪のみに利きます。
また4WD車は四輪に利くというイメージがあると思いますが、ほとんどの4WD車はベースとなる駆動輪にしか利かないと思って下さい。
フルタイム4WDとされている車はほとんどスタンバイ式4WDといって滑った時に4WDになるという仕様です。なので同じ車種の2WDがFFかFRかでベースとなる駆動方式を判別出来ます。
MT車のエンジンのかけ方
MT車のエンジンのかけ方は以下の通りです。
- サイドブレーキがかかっているのか確認する(かかっていなければかける)
- フットブレーキを踏む
- クラッチを踏んでギアをニュートラルにする(フットブレーキを踏んだ状態で)
- エンジンをかける(スタートボタンを押す、またはキーを右に回す)
順番に関しては1、2は入れ替わっても問題ありませんが、操作に関してはすべて行う事を推奨します。
これから各操作を行う理由を説明していきます。
クラッチを踏んでニュートラルにする理由
エンジンをかける時にクラッチを踏む理由については主に2つの理由があります。
- クラッチを踏まないとエンジンをかけられない様になっている
- クラッチを踏む事によってエンジンの負荷が軽くなりエンジンがかかりやすくなる
個々について説明します。
なぜクラッチを踏まないとエンジンをかけられないのか?
実を言うと今から30年程前のMT車はクラッチを踏まなくてもエンジンをかける事が可能でした。問題点としてギアが入っている状態でエンジンをかけると車が動いてしまい事故が起こる事がありました。
例えば窓が開いていればエンジンをかける事も可能だったのでギアが入っていると車が暴走するという様な事故等がありました。
この様な理由として安全性の為に今の車ではクラッチを踏まないとセルモーターが回らない仕様になっています。
またクラッチを踏むという事は基本的には運転席にドライバーが乗っている状態となるのでエンジン始動時の事故が大幅に減る様になりました。
エンジンをかける時にはクラッチを踏まないとセルモーターが回らない仕様になっているのでエンジンをかける時は必ずクラッチを踏みましょう。
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クラッチを踏まなければエンジンがかからないという仕様を知らない年配者の方が久しぶりにMT車のエンジンをかけようとすると、クラッチを踏まずにエンジンをかけようとする方も多いので「壊れている」と思われる事もよくあります。
また古いMT車はクラッチを踏まなくてもエンジンをかけれる場合があるのでギアが入った状態だと突然動くので注意しましょう。
クラッチを踏むとエンジンに負荷が軽くなる理由について
クラッチを踏んだ状態もギアをニュートラルの状態もギアが入っていない(エンジンに動力が伝わっていない)事には変わりありませんが、エンジンに対する負荷は「ニュートラル>クラッチを踏んだ状態」となります。
難しい話は割愛しますが下の画像を見て下さい。
画像引用元:マニュアルトランスミッション|Wikipedia
上の画像はクラッチを踏んだ状態でクラッチ板(画像の左側)がクランクシャフトから離れた状態なので軽くて、クラッチを放すとクラッチ板とクランクシャフトがくっつくのでニュートラルの状態でギアが入っていないとしてもクラッチ板やシャフトの分重くなります。
なのでエンジンをかける時にクラッチを踏む理由はエンジンの負荷を減らしてエンジンをかかりやすくする意味合いもあります。
クラッチを踏んだ状態からニュートラルにしてゆっくりクラッチを上げると、左足に神経を集中すればクラッチに若干負荷がかかるのを感じる事が出来ます。
ちなみにクラッチを踏まなくてもエンジンがかかる仕様の時代でも教習所ではクラッチを踏んでエンジンをかける様に教えていました。
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エンジンをかける時にギアをニュートラルにする理由
クラッチさえ踏んでいれば仮にギアを入れた状態でもエンジンをかける事は可能ですが、なぜニュートラルにするかというと安全の為です。
例えば不意に足の力が緩んでクラッチを上げてしまったとしてもギアがニュートラルの状態であれば動く事はありません。
なのでエンジンをかける時はギアをニュートラルにしておきましょう。
サイドブレーキがかかっているのか確認する事とフットブレーキを踏む理由
サイドブレーキがかかっているのか確認する事とフットブレーキを踏む理由については安全の為です。
例えば駐車した状態がサイドブレーキをかけ忘れてる場合だと、エンジンをかける時にクラッチを踏むのでもし坂だった場合はクラッチ踏んだ途端に車が動いてしまいます。サイドブレーキをかけている事によって車が動く事を抑制出来ます。
またフットブレーキを踏む理由はサイドブレーキがかかっている状態でも急な坂の場合は動いてしまう事もあるからです。
サイドブレーキとフットブレーキを両方利かせる事によってより安全にエンジンをかけれる様になります。
MT車のエンジンの切り方
MT車のエンジンの切り方は以下の通りです。
ニュートラルでアイドリングの状態と仮定して
- フットブレーキを踏む(ずっと踏みっぱなし)
- サイドブレーキを引く
- クラッチを踏んでギアを1速かRに入れる
- エンジンを切る(ストップボタンを押す、またはキーを左に回す)
- クラッチを放す
- フットブレーキを放す
順番に関しては平地なら1、2は入れ替わってもあまり問題ありませんが、基本的には上記の順番を守る事を推奨します。
最終的に(駐車する時に)エンジンを切った後にギアが入った状態にする事とサイドブレーキがかかっている状態にする事が重要です。
各操作を行う理由について説明していきます。
サイドブレーキを引く理由
サイドブレーキを引く理由はエンジンを停止する作業を行う時と駐車時に車が動きづらくする為です。
またそれ以上に重要な事としてエンジンをかける時にサイドブレーキがかかった状態にしておくと、先述しましたが安全にエンジンをかけられる様になります。
基本的には駐車時にサイドブレーキをかけておきますが、例外として大雪が降る時はサイドブレーキはかけない方がよいです。
何故かというとブレーキに雪が付着してそのまま凍ってしまいサイドブレーキを戻せなくなる場合があるからです。大雪が降る場合はサイドブレーキをかけずにギアだけ入れておいた方が無難です。(最近の車はあまりサイドブレーキが凍る事はありませんが念の為)
フットブレーキを踏む理由
フットブレーキを踏む理由はもう言うまでもないかと思いますがサイドブレーキだけでは弱いからです。
実際のところ平地の場合はフットブレーキを踏まなくてもあまり問題はありませんが、坂の時は特にフットブレーキを踏む事が重要です。
ギアを1速かRに入れる理由
駐車時にギアをニュートラルにしてサイドブレーキだけにしておく事だけは絶対にやらない方がよいです。何度も言っていますがサイドブレーキはあまり強くないので駐車時には必ずギアブレーキを利かせておきましょう。
ギアを入れた方がよっぽど強力なブレーキになります。
実際に東日本大震災の時、サイドブレーキだけかけたトラックのMT車が動いてしまったと知人から聞いた事があります。
なので駐車時は必ずギアを1速かRに入れておきましょう。
入れるギアはなぜ1速かRするかの理由は低速ギアの方がブレーキが強いからです。実際にはどのギアに入れても動く事はほぼありませんが1速かRが強いのでセオリーとされています。
また1速かRのどちらに入れるかの判断は「エンジンをかけて動いてしまった時に安全な方向」と考えて下さい。
※エンジンをかける時にニュートラルにせずにクラッチだけを踏んで不意にクラッチを上げてしまった時は動いてしまうのでその時の対策としてです
上り坂なら1速
⇒1速に入れておけば不意に動いたとしても抵抗があるのでエンストする
※もしRだったらそのまま加速して暴走する危険がある
車の前にすぐ崖がある場合はR
⇒Rに入れておけば不意に動いたとしても崖から遠ざかる
※もし1速だったら崖に落ちる危険がある
少し怖い例を挙げましたが、エンジンをかける時に動いてしまう事を考えて危なくない方向に進む事を考えてギアを入れておきましょう。
どちらに動いても危険度が変わらない場合は1速かRのどちらに入れても問題ありません。
先述しましたがエンジン停止時に入れたギアブレーキは駆動輪にしか利きません。サイドブレーキは後ろに利くのでFF車の場合はサイドブレーキとギアブレーキで四輪にブレーキを利かせられますが、FR車の場合は両方利かせたとしても後ろにしか利きません。
なので特にFR車は場合によっては車止めの必要性がある事を頭に入れておいて下さい。例えば駐車場で後輪の部分が凍ってしまっている場合は前輪はフリーなので容易に車が動いてしまいます。
またFF車でも後輪のブレーキの方が弱いので前輪の方が滑りやすい状態だと動く危険度が上がりますのでいずれにしても車止めが必要になる場合もあります。
エンジンを切ってからクラッチを放してブレーキを放す順番の理由
まず大前提として既にサイドブレーキを利かせている状態ですが、エンジンを切ってからクラッチを放してブレーキを放す順番の理由についてもサイドブレーキがあまり強くないからです。
強力なフットブレーキでまずは車を動かない様にしておいてエンジンを切ってギアを入れた状態でクラッチを放すと強いギアブレーキを利かせる事が出来ます。
ギアブレーキが利いたら車が動く心配はほぼ無いのでフットブレーキを放してよい事になります。
最終的にギアブレーキとサイドブレーキが利いた状態になっているので安全な駐車の状態になっていると言えます。
古いMT車の裏技:「押しがけ」について
「押しがけ」という言葉はもう死語に近い状態ですが、MT車には押しがけという裏技があります。
押しがけとは車を人力や坂で動かしてエンジンをかける事を言います。
※最近の車だとプッシュボタン式が多くなっているので出来ない車種が結構あります。キーを回すタイプだと基本的に出来ますがメーカー側は推奨していませんので雑学として覚えておいて下さい。
MT車のバッテリーが上がった場合に昔は割と頻繁に行われていた事です。
- キーを右に回してオンにする
- クラッチを踏んでギアを2速か3速に入れる
- サイドブレーキやフットブレーキがかかっていない状態にする
- 車を押してもらう(下り坂で動く場合も可能)
- 車が動いている時にクラッチを上げる
- エンジンがかかったらすぐにクラッチを切ってアクセルで煽ってエンジンの回転を安定させる
押しがけはAT車では出来ない事なのでMT車のメリットでもありました。すぐにエンジンをかけられますし、何よりもブースターケーブルを用意して救援車と繋ぐという面倒な作業をする必要がありませんでした。
まとめ
では最後にポイントまとめます。
エンジンを始動する時の手順
- サイドブレーキがかかっているのか確認する(かかっていなければかける)
- フットブレーキを踏む
- クラッチを踏んでギアをニュートラルにする(フットブレーキを踏んだ状態で)
- エンジンをかける(スタートボタンを押す、またはキーを右に回す)
ニュートラルでアイドリングの状態と仮定して
エンジンを停止する時の手順
- フットブレーキを踏む
- サイドブレーキを引く
- クラッチを踏んでギアを1速かRに入れる
- エンジンを切る(ストップボタンを押す、またはキーを左に回す)
- クラッチを放す
- フットブレーキを放す
- サイドブレーキはあまり強くないのでフットブレーキやギアブレーキに頼る
- 各操作を行う事を意識する事によって万が一抜けている操作があったとしてもリスクを減らせられる
各操作には意味があるので意味を理解して安全にエンジンを始動、停止しましょう。
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